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大阪高等裁判所 平成4年(行コ)30号 判決

主文

一  原判決中控訴人柳川三男及び同阿部陽一に関する部分を取り消し、右部分を大阪地方裁判所に差し戻す。

二  控訴人小山広明の控訴を棄却する。

三  前項にかかる控訴費用は同控訴人の負担とする。

事実及び理由

〔中略〕

第四 当裁判所の判断

一  まず、本件訴えが適法な訴えかどうかについて検討する。

当裁判所は、控訴人らの本件訴えのうち、控訴人小山に関する部分は不適法としてこれを却下すべきであるが、その余の控訴人らに関する部分は適法であるから、第一審裁判所が更に審理をするべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決の「第三 争点に対する判断」欄に記載のとおりであるから、それを引用する。

1  原判決三枚目表一〇行目の「五、一二、一三」を「五ないし一三、二〇、二一」に、同一一行目の「によれば」を「、控訴人柳川三男の当審における本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると」に、同裏四行目の「関西空港会社」を「関西国際空港株式会社」に各改め、同六行目の「謝礼として」の次に「数回にわたり、一回当たり数万円相当の」を、同七行目の「右協議会に際して」の次に「多数回にわたり、一回当たり最大十数万円の範囲内で」を各加え、同九行目冒頭から同一一行目末尾までを削る。

2  同四枚目裏一行目の「ためであり、」から同二行目の「なかった」までを「ためであった」に、同九行目の「努め」を「務め」に各改める。

3  同五枚目表二行目末尾に続けて「なお、同委員会の審議は、控訴人柳川三男(以下「控訴人柳川」という。)及び同阿部陽一(以下「控訴人阿部」という。)等一般の住民の傍聴が許されていなかった。」を加え、同四行目から五行目へかけての「ビラを街頭で配布し、」を「ビラ約三〇〇〇枚を市内四か所の駅頭で配布したが、通勤に電車を利用しない控訴人柳川は、右ビラを手にして見ることがなかった。控訴人小山は、」に改め、同八行目末尾に続けて「その間、控訴人小山は、市議会議員名の文書で、ビール券を配られたり、宴席の接待を受けたりしたとされる職員の属する機関の長に対し、右支出の裏付調査を依頼したが、いずれについても、はかばかしい回答は得られなかった。」を加え、同九行目冒頭から同一一行目の「話し、」までを次のとおり改める。

「控訴人小山は、右議会終了後の翌一五日ころに、かねて同人の選挙を応援し、関西国際空港建設反対運動を共に行っていた控訴人阿部を、また、平成元年三月に隣接鉄工所からの騒音の問題で相談を受けたことから面識のあった同柳川を、それぞれ個別に訪問して右の本件報償費及び本件食糧費の問題について話した。右両名は、そのとき初めて右問題の存在を知った。次いで、控訴人小山は、」

4  同裏五行目の「送られたり」を「配られたり」に改め、同行の「される」の次に「職員の属する」を加え、同六行目の「その間」から同八行目末尾までを次のとおり改める。

「また、その間、同月中旬ころには、控訴人阿部方に同柳川を案内し、右面会の際に録音したテープを聴かせたところ、控訴人柳川は、表谷助役らの答弁に反省の色がみられないとして、いたく憤慨した。そこで、控訴人小山は控訴人阿部及び同柳川に対し、「監査請求をして市に追及していきたい。」と提案した。右両名は、それまで住民監査請求等に関与したことは全くなかったが、控訴人小山の提案に賛同し、前記(争いのない事実4)のとおり、控訴人三名ほか一名で、同年五月一七日に本件監査請求を行った。」

5  同一〇行目の「その使途も」から同六枚目表一行目冒頭の「しかも、」までを「右各支出行為については本来市議会の議決を必要としないため、通例その使途や明細までは明らかにされていなかった。また、」に改める。

6  同七行目の「容易に」及び同九行目の「十分に」を削り、同行の「でき、」から同末行末尾までを「できる。」に改める。

7  同七枚目表四行目冒頭から同裏一行目末尾までを次のとおり改ある。

「しかし、控訴人阿部及び同柳川は、控訴人小山とは異なり、いずれも泉南市の一般の住民の中の一人にほかならない。したがって、同市の予算の執行状況について、一般の住民に先んじてその内容を知りうる可能性のあるような立場(例えば、控訴人小山に類した特定の公職にある等)には置かれていなかったものというほかはなく、他に、控訴人阿部、同柳川が右のような立場にあったこと等右予算の執行状況について、一般の住民に先んじてその内容を知りうる可能性があったことを首肯すべき事実関係を認めるに足りる証拠はない。かえって、前掲証拠によれば、右控訴人両名が本件報償費及び本件食糧費の問題を聞かされたのは平成二年三月一五日ころが初めてであって、控訴人小山と面識が深まったのは、控訴人阿部については選挙応援及び空港建設反対運動が機縁であり、控訴人柳川については隣接鉄工所の騒音問題が機縁であったことからすると、市議会議員の公職にある控訴人小山が同年一月二三日ころに本件報償費及び本件食糧費の使途を知ったからといって、右両名が当然にそのころこれを知ることができたものとすることはできない。その他本件全証拠を総合しても、右控訴人両名において右のころにこの点を知ったことを肯認するに足りないのである。

そうすると、右両名については、同年三月一五日ころの時点に本件報償費及び本件食糧費の問題を知ったことを前提に、本件監査請求が相当な期間経過後になされたか否かを判断すべきところ、本件各支出行為の明瞭性、その回数、一回当たりの支出額等のほか、右両名の一般住民としての立場、控訴人小山との関係、同控訴人から監査請求の提案を受けた時期、従前の監査請求経験の有無等、前認定の各事実に照らせば、右両名のした平成二年五月一七日の本件監査請求は、なお相当な期間経過前になされたものというべきである。」

8  同二行目冒頭から同末行末尾までを削る。

二  以上のとおりであるから、本件監査請求が、地方自治法二四二条二項による、本件報償費及び本件食糧費の各支出行為のあった日(又は終わった日)から一年を経過した後になされていることについては、控訴人小山に関しては、同項ただし書に定める正当な理由があるものとすることはできないが、控訴人阿部及び同柳川に関しては、右の正当な理由があるものというべきである。

第五 結論

以上のとおり、控訴人らの本件訴えは、控訴人小山に関しては、結局、適法な監査請求を経ていない不適法なものというべきであるが、その余の控訴人両名に関しては、適法な監査請求を経た適法なものというべきである。よって、原判決中、控訴人小山に関する部分は正当であって、同控訴人の控訴は理由がないからこれを棄却し、その余の控訴人両名に関する部分は、右に説示したところとその趣旨を異にするからこれを取り消し、更に審理をする必要があるからこの部分を大阪地方裁判所に差し戻すこととし、訴訟費用は主文第三項のとおり負担させることとして、この判決をする。

(裁判長裁判官 仙田富士夫 裁判官 竹原俊一 渡邊壯)

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